2024年6月一般質問:大綱①市民協働ですすめる環境施策について

6月議会の一般質問が終わりました。
1時間の質問持ち時間のなかで、一問一答方式を選び、毎回質問に臨んでいます。
一問一答の再質問前、1回目の質問と市の答弁を以下に書き出します。

※再質問部分については、任期中は市の公式HPの動画からご覧頂けます。以下リンクの25分ごろから一問一答が始まります。
https://smart.discussvision.net/smart/tenant/akishima/WebView/rd/speech.html?council_id=49&schedule_id=1&playlist_id=6&speaker_id=29&target_year=2024&fbclid=IwZXh0bgNhZW0CMTAAAR0Pg-8U87HsE6MdAWwb-mxaxZ9PcUTiUNF2KgbzYRzXOxOSfg0ikO3bwkg_aem__5BEklg5dbgAxlFa6ySUvg

【林質問】
ただいま議長の御指名を受けましたので、通告に従い、大綱2問の一般質問を始めさせていただきます。

大綱1 市民協働ですすめる環境施策について
細目1 水、緑、生物多様性等について

昨年10月、国連大学環境・人間の安全保障研究所が2023年版『相互に関連する災害リスク』を公表しました。世界で約50万人の猛暑による死者や、人類が存在できない暑さを記録する地点が生じている状況、年約270ギガトン融解する氷河、世界の主要な帯水層の半分以上で枯渇しつつある地下水、さらには2040年までに山火事や豪雨といった激甚災害による経済損失が倍増する予測など示されています。気候変動を、人類の存在そのものに関わる安全保障上の問題とする「気候安全保障」の視点を踏まえた対策も必要とされる、非常に深刻な状況です。

2030 年頃までのいわゆる「勝負の 10 年」に行う我々の選択や行動は、現在から数千年先 まで影響を持つ可能性が高いともされるなかで、昨年の世界の年平均気温は観測史上最高、地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」で掲げる「1.5℃目標」に迫る、産業革命前から1.45度の上昇となってしまいました。さらに、今月5日、世界気象機関は、世界は今後5年の間に、年間平均気温が産業革命以前より1.5度以上高い年を経験する可能性にまで言及しています。

温暖化の影響を大きくうける生物多様性に注目すると、現代は、6500万年前、隕石が地球に衝突したことが引き金となり恐竜など76%の生物が死に絶えて以来の、人間活動の影響による「第6の大量絶滅時代」といわれており、国連は今後数十年間で約100万種の生物が絶滅の危機にあると警告しています。

しかし、私たち人間の暮らしは食料や水の供給、気候の安定など、生物多様性を基盤とした生態系から得られる恵み、いわゆる生態系サービスの上に成り立っています。生態系サービスなどで形成される「自然資本」に世界のGDPの半分に相当する44兆ドルが直接的に依存しているとされており、自然資本が過度に損なわれ、その源にある生物多様性が失われた状態は、人類の存続・生活や社会経済活動の基盤を失うことなのだとまずはひろく認識されるべきです。

本年5月に閣議決定された第六次環境基本計画においては、人間の活動が環境収容力を超過した結果、気候変動、生物多様性の損失及び汚染という3つの危機に直面しており、その対策として、「脱炭素」で、「循環型」で、さらには自然生態系の損失を食い止め回復させていく「ネイチャーポジティブ」な経済社会システムに転換し、現在及び将来の国民一人ひとりのウェルビーイング/高い生活の質の実現を目指しています。目標実現には、まず地域における取組みが必要ですが、地方公共団体の役割としては、地域の主体性を基本として、自然資本の維持・回復・充実を前提に、地域資源を持続的に活用しながら地域課題を解決しつづける「地域循環共生圏」を創造すること、その際には関係部局間分野横断的な連携を図りながら、地域の特性に応じた取組の目標や方向性について地域の企業や、団体、住民をまきこみ議論し検討する場をつくること、さらには住民、事業者、民間団体、他の地方公共団体や国の関係機関と対話を通じた協働の取組みによる施策展開が期待されています。

つまり情報提供・情報公開を充実させ、一人ひとりが持続可能な社会の担い手との当事者意識を持てるよう、いかに市民参画・市民協働の仕組みをつくれるか、また市民に限定しないあらゆる主体とのパートナーシップを強化しながら目指す社会像の実現に向けた行動に繋げていけるかが問われています。まずは昭島市の主要な環境施策の現状把握をすべく、昭島市環境基本計画に掲げられる施策の進捗について質問させて頂きます。

昭島市の貴重な自然資本のひとつは深層地下水です。「水循環の促進」の施策の進捗をお答えください。

次に、国連食料農業機関によると、樹木はその生涯を通じて、植えたり手入れのための投資額の2~3倍の価値をうみだします。実際に、緑は地球温暖化対策、生物多様性保全、地下水保全、食料の供給、防災・減災、生活への潤いなど多様な価値を有しており、保全・創出の取組みは必須です。市では2019年時点のみどり率41.1%維持の目標を掲げていますが、一方、GLP昭島プロジェクトひとつとっても、維持されないことが明かです。対策をお答えください。

次に、東京都生物多様性地域戦略では、都内で生物多様性に影響を与える第一の危機として、開発や乱獲、過剰利用による生きものの生息・生育地の減少及び種の減少・絶滅を挙げていますが、市も例外ではなく、保全の大前提となるのが実態把握です。市民協働でのチェックや保全にも繋げられるよう市民とともに取り組むべきですが、計画にある「市民や市民団体、学識経験者などとの協力による動植物の生育・生息調査の実施」の状況をお答えください。

次に、地球温暖化対策については、GLPの環境影響評価書案、温室効果ガスの項目で示される規模のエネルギー消費施設は都内では品川火力発電所に匹敵し、これだけの規模・排出量のデータセンターは国内にないのではとエネルギー・環境領域の専門家からご指摘がありました。建物などからの人工排熱の増加などによるヒートアイランド現象も関連した深刻な課題であり、真夏日・猛暑日に温度がさらに上がり、熱中症が多発するリスクがあります。近年、国内では熱中症による死亡者数は年間1,000人を超える年が頻発するなど、自然災害による死亡者数を上回る状況にあり、命にも関わる問題もはらんでいると冒頭意見します。市の計画との整合性の観点では、市の温室効果ガス量の2030年度の目標値は27万トン以下ですが、GLPの環境影響評価書案においては、桁違いの178万8千275トンです。これでは、市の計画がいち事業のために破綻します。対策をお答えください。

【市長答弁】

昭島市は、深層地下水100%の水道水を可能とする水資源、多摩川や玉川上水、緑が連なる立川崖線や清らかな湧水など、多様な水と緑に恵まれた都市として発展してきました。これら多様な水と緑は、用水路や池などと相まって、都魅力を高めるとともに、環境保全、生物多様性保持、景観形成、レクリエーション、防災機能など様々な役割を果たしながら、私たちの生活環境を真に豊かにしてくれると思っております。

一方、近年世界各地で地球温暖化による、強い台風やハリケーン、集中豪雨、干ばつや熱波など異常気象による災害が発生しております。市内でも台風や局地的な豪雨による気象災害が起こっており、今後気候変動が進むことで、浸水被害や土砂災害発生リスクの増大等、人々の生活に影響を与えるのではないかと思っております。

まちの魅力である水と緑を次世代に引き継ぐこと、また気候変動の影響に備え、脱炭素社会を目指して取り組むことは、私たち世代の責務であり、主要課題であると認識しております。

望ましい環境像「気候危機を乗り越え、美しい水と緑を将来の世代へ」を合言葉に、引き続き、市民、事業者の皆様と市が協働し、地球温暖化対策を始め、恵まれた地域特性である水と緑を守り、創る取組を推進し、「水と緑が育む ふるさと昭島」を次世代へと引き継いでいくために取り組んでまいります。

【環境部長答弁】

ご質問の1点目、市民協働ですすめる環境施策についてご答弁申し上げます。

初めに、水循環の促進の施策についてであります。

地方公共団体の責務として、水循環基本法においては、国及び他の地方公共団体との連携、地域の特性に応じた施策の策定及び実施が定められ、また、雨水の利用の推進に関する法律においては、区域の自然的社会的条件に応じた雨水利用推進に関する施策の策定及び実施が定められております。

本市におきましては、上流域の理解のもとに地下水を水道水として利用させていただいている流域の一員であることから、地下水の流域の枠組みの中において、健全な水循環を維持していくことが重要であると認識しております。市内における湧水箇所等の定期的な水量・水質検査による保全、奥多摩・昭島市民の森事業等広域的な視点から見た水循環の保全活動、また、雨水貯留槽設置助成金や雨水浸透施設設置助成金の交付など、都市化が進んでいく中にあっても、水循環の推進、地下水の涵養、雨水の利用等を図っているところであります。

次に、みどり率維持のための市の対策についてであります。

みどり率につきましては、都が実施している調査によれば、平成25年度43.3%、平成30年度41.1%と減少傾向にあります。その主な要因は、農地の宅地化などに伴う減少であります。環境基本計画では、平成30年度のみどり率41.1%維持を当面の目標値としており、宅地開発等指導要綱に基づく緑地確保、市が管理する崖線緑地や街路樹の適正管理に加え、保存樹木・保存樹林の指定やせん定費用等への補助、苗木の有料配布、花の応援事業など市民や事業者の皆様にもご協力いただきながら、困難性の高い目標ではありますが、引き続き、注力してまいります。

次に、動植物の生育・生息調査の実施についてであります。

市内には、多摩川や玉川上水等の水辺環境、畑や水田等の農地と用水路、立川崖線沿いの樹林地など、生物にとって多様な生育・生息空間が形成されております。これらの空間について、引き続き、生物多様性に配慮した保全と維持管理、水と緑の連続性を確保するエコロジカル・ネットワークの創出に努め、生息する動植物の把握やアライグマ、オオキンケイギクなどの特定外来生物の防除にも取り組みながら、多様な生き物と共生するまちづくりを進めていくため、令和4年に生物多様性地域戦略など各計画を内包する形で、環境基本計画を策定いたしました。

現在、市民や市民団体、学識経験者などとの協力による動植物の生育・生息調査を実施する具体的な予定はございませんが、今後環境基本計画の中間見直しに合わせて実施する生物多様性地域戦略の見直しに向け、市民団体等のご意見も聞きながら、効果的な調査方法等を検討してまいります。

次に、GLP昭島プロジェクト環境影響評価書案で示された温室効果ガス排出量についてであります。

市では、地球温暖化対策実行計画に基づき、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、市域の温室効果ガス排出量について2030年カーボンハーフを、また、市の事務事業に伴う温室効果ガス排出量について2030年カーボン25(ワンクォーター)をそれぞれ目標として掲げ、脱炭素化に向けた取組・行動を実践しているところであります。

本年1月にGLP昭島プロジェクトに係る環境影響評価書案が事業者から提出され、その中で工事完了後に予想される温室効果ガス排出量が示されました。この排出量は、通常の電気を調達した場合の排出係数で試算されていることから、本年3月に地元市長として、物流施設及びデータセンターで受電する電気は、積極的に再生可能エネルギー100%由来の電気を調達するよう意見を提出したところであります。

今後、東京都の環境影響評価条例に基づき、温室効果ガスも評価項目として審議されていくことから、専門家による審議の内容を注視するとともに、引き続き、開発事業者へ一層の温室効果ガス排出量削減を求めてまいります。