2019年6月議会 林まい子 一般質問報告①ゲームやスマートフォンの普及への対応について
林まい子の6月議会の一般質問とその答弁を報告します。
昭島市のインターネット映像配信からは、再質問含めご覧頂けますのでご利用下さい。http://smart.discussvision.net/smart/tenant/akishima/WebView/
大綱1.ゲームやスマートフォンの普及への対応について質問いたします。
私は、現在、保育園児、小学生、中学生の3人の子どもたちを育てていますが、子育て環境が年々激変していることを実感しています。ゲームやスマホの普及と、それに伴う親子や友達とのコミュニケーションのとり方や遊び方、一日の時間の過ごし方が最も大きな変化です。ベネッセ教育総合研究所は、2017年に「第2回 乳幼児の親子のメディア活用調査」を実施。4年間で親のスマホ使用率は60.5%から92.4%に、0歳後半~6歳児がスマホにほとんど毎日接するとの回答が11.6%から、21.2%に増加していました。実際にまちでは、外食先での待ち時間や大人同士が会話をしている間に、子どもはスマホを見ている、といった、様々な場面を見受けます。
産後の現場をまわられている方からも、スマホが普及したことで産後の親子や夫婦の関係性、コミュニケーションのあり方に変化が見受けられ、体験を共有することで形成される愛着の機会が奪われているのではないか。また、スマホからの情報の受け止め方で心を病む方がいる。親に対しては人としっかり関わり、人のつながりの大切さを知ってもらう働きかけの必要性、子どもに対してはコミュニケーション能力を育てる教育の必要性を感じるとのご意見を頂きました。
スマホとどのようにつきあうか誰もが考える必要があり、ひととのコミュニケーションを意識して大切にする時代になっていると考えられます。スマホ育児の背景には、核家族化が進み、赤ちゃんとどう接してよいのか分からない、頼れる相談相手がそばにいない、出先で子どもが騒ぐと困る、すこしほっとする時間をもちたい、など育児の困難や孤立化の解決策として活用するケース、あるいは、知育アプリで子どもの能力を伸ばしたい等前向きに検討して活用するケースがあると思います。
特に前者については、なぜ育児にスマホを活用するのか、背景まで考える必要があります。いまある状況の背景に切り込んでの施策は、スマホ育児のみならず、他の問題の芽を摘むことにも繋がります。
さて、ゲーム・スマホの普及が拡がった状況とは、誰もが依存になってもおかしくないインフラが整っているともいえます。世界保健機関が「ゲーム障害」を精神疾患として正式に認定。厚生労働省の調査では、中高生の約93万人、7人に1人がインターネット依存で、5年前調査に比べ約40万人増加といわれています。
日本で初めて「インターネット依存専門治療外来」を開設した樋口進さんによると、場所や時間を選ばず気軽にプレーできるスマホゲームは、大きな依存リスクがあり、スマホの普及に伴い加速化するゲーム依存が問題視されています。
先日、NHKクローズアップ現代で「スマホ脳過労」の特集も組まれていましたが、スマホ依存は脳科学の世界で物議を醸しています。30~50代の働き盛りでも、もの忘れが激しくなり判断力や意欲が低下、患者の脳では前頭葉の血流が減少するそうです。東北大学は、スマホの使用時間が長い子どもの大脳に発達の遅れが見られると発表。一部自治体は子どものスマホ規制に動き出しているとのこと。
先週は長時間のスマホ利用が影響していると思われる急性内斜視もメディアで大きく取り上げられていました。子どもにとっては、依存による体や学力への影響はもちろん、金銭トラブル、いじめや事件の加害者・被害者にも繋がりうるデメリットを有しています。 国をあげてネット依存治療合宿をおこなう韓国、小中学校でのスマホ禁止の法案を可決したフランスなど各国での取り組みはさまざまです。以上、持つことでのメリットとデメリットを把握した上で、どのような接し方が望ましいのか、世界の動向も注視しながら考えていく必要があると考えます。
そこでお聞きします。
細目1 依存についてお聞かせください。
質問1:依存傾向が社会問題化していますが、市の認識を教えてください。
【答弁者:保健福祉部長】
はじめに、依存傾向の社会問題化についてであります。先月末、世界保健機関(WHO)は、ゲーム障害を国際疾病分類の1つとして正式に認定しました。これは2022年に発効されることとなり、ゲーム障害は、アルコールやギャンブルと並んで疾病となったわけであります。しかしながら、世界保健機関は、ゲーム障害を診断するには、十分に厳格である必要があるとも述べており、ゲーム障害と診断される率は極めて低いともいわれております。
総務省の情報通信白書(平成30年版)では、世帯におけるスマートフォンの保有率は、上昇を続けており、家庭の中で、大人だけではなく子どもも、気軽に触れることができるようになって来ました。情報通信機器は、手軽に情報にアクセスすることが可能であり、動画や写真などのデータの保存も簡単で、非常に便利なものであります。しかしながら、その使い方を間違えれば、スマートフォンの使用を続けることで昼夜が逆転したり、成績が著しく下がるなどの問題が起きたり、歩きスマホや車両を運転しながらのスマートフォン利用により、他人に危害を及ぼす可能性もあります。スマートフォンなどへの過度の依存傾向は、社会生活を営む上での障害となるとともに、重度の方には医療的な支援が必要となるものと考えております。
質問2:子ども、その親、それぞれにつき、現在の社会状況からして依存の背景に何があると想定をし、市としてどのような対策がとれると思われますか。
【答弁者:保健福祉部長】
次に、依存の背景と、その対策についてであります。依存症の範囲がどこまでなのか、確定してはおりませんが、市民が依存状態に陥るとしても、それぞれ個別の背景があり、一まとめにできるものとは考えておりません。したがいまして、現時点で市が取れる具体的な対策を述べることは困難であります。
質問3:中高生のネット依存が7人に1人といわれる時代です。18歳で判断能力を持って成人できるような環境を大人が整備する前段階としてまず実態把握が必要ではないかと考えます。背景の特定が難しい場合、今後学齢に達した子どもに対し現在の実態調査上で、利用時間や利用目的の追加確認予定はありますか。
【答弁者:保健福祉部長】
次に、実態調査による確認の予定についてであります。児童、生徒に対し、スマホなどの利用時間や利用する理由などを調査する予定はあるのかとのご質問でございますが、こうした調査を行うとなれば、手法の選定や、調査内容の検討、また、財政的な課題も解決しなければなりません。また、こうした調査により、その背景を特定して行くことが可能となるのかも不透明であります。従いまして、現時点におきましては、実施する考えはございません。
さて、主にはスマホ・ゲームの依存性と、その影響や背景について述べてまいりましたが、このあとは、スマホと啓発に特化してまいります。
昨年4月に警視庁が発表したSNSを使って事件に巻き込まれた18歳未満の子どもは昨年1年間で1,813件と過去最多。被害にあった子どものフィルタリング設定率が、15.8%と大変低率でした。昭島市でも、平成29年度「昭島市立学校の児童・生徒及び保護者アンケート」調査結果によると携帯電話やスマホを持つ児童・生徒のうち、SNS家庭ルールを決めている小学生は43.5%、中学生は53.4%に留まりました。東京都の調査結果からもスマホ所持は年々低年齢化しているようで、小学校低学年からの情報提供が必要です。
本年、光華小学校、つつじが丘小学校、清泉中学校のセーフティ教室を見学してまいりましたが、参観する保護者は少数でした。学校は子どもに直接対面で情報を伝える力があります。大人もスマホへの接し方について考える機会があれば相乗効果がありますが、学校を基点としたせっかくの取り組みが、子どもを通じて家庭にまで浸透していないようです。より効果的な啓発をするに当たり、これ以上学校の業務を増やさないよう、外部リソースの活用もひとつの選択肢だと思います。
全て学校行政にお任せではなく、自分の周りから考える輪を拡げられないかと昨年友人たちと昭島市「子どもと親の家庭教育講座」の制度を用いてNPO法人青少年メディア研究協会の下田太一さんを講師に招き「ゲーム・スマホ、どう向きあう?」という親子向けの講演会を企画しました。
下田さんによると、例えば、八王子市では、市立中学校PTA連合会「ケータイ利用問題対策ワーキンググループ」の支援を通じ、携帯電話等利用実態調査、PTA主催事業や学校行事としての講演活動、親子対談式の中学生ミーティング等、子どもや親への様々なアプローチを実施。PTA主導で地域協働の活動モデル作りをしているそうです。
八王子市以外でも、栃木県での指導員養成、前橋市での市民提案型パートナーシップ事業など様々な取り組みがあるようで、外部リソースを適宜活用することで、従来の発想とは異なるアプローチができること、学校、家庭以外にもPTAなどさまざまなステークホルダーが関われることを示して下さいました。
利用者は、子どもであれ大人であれメリットとデメリットを把握する。デメリットについては啓発を行う。更には、なぜその道具を持つのか、どのように道具を使えばいろいろなトラブルをできるだけ回避しながら自分の世界を拡げ生活を豊かにすることに活用できるのか、考える必要があります。そのために、学校や必要応じて外部リソースの力も借りつつ定期的な啓発をすること、あわせて行政により背景にあると想定される問題への切り込みまでが必要とされていると考えます。ぜひ昭島市で、他の自治体に負けず劣らぬ施策を考えて頂きたいとおもいます。
そこで細目2 学力との関係性と教育現場での取り組みについて お聞きします。
質問1:児童のスマホ利用と学力との関係を市はどのように捉えていますか。
【答弁者:学校教育部長】
はじめに、「児童のスマートフォン利用と学力との関係について」でありますが、児童・生徒が携帯電話やスマートフォンを長時間利用することにより、学習時間が減少し、結果的に学力が低下することが懸念されております。
質問2:昭島市では学力向上を目指すにあたり、スマホ所持等生活習慣の整備をどのように考えていますか。
【答弁者:学校教育部長】
次に、「昭島市では学力向上を目指すにあたり、スマートフォン所持等生活習慣の整備について」でありますが、本市では、全校で「元気アップガイドブック」を活用し、携帯電話やスマートフォンの利用を含め、規則正しい生活習慣を確立し、元気に学校生活を送り、学力、体力の向上を目指しております。
質問3:これまで様々な対策をしても、なかなかトラブル減に繋がらないのが現状かと思います。子どもへの指導とあわせて、保護者に対しても、セーフティ教室参加率アップへの働きかけ、入学式や学年・クラス保護者会等行事を用いての情報提供・相談など双方向のやりとりができる機会を設けることができませんか。
【答弁者:学校教育部長】
次に、「保護者への働きかけについて」でありますが、児童・生徒に携帯電話やスマートフォンをもたせることについては、保護者が決定することですので、各学校では、入学説明会や年度初めの保護者会、セーフティ教室等、様々な機会を捉えて保護者への啓発活動を実施しているところです。特にセーフティ教室は児童・生徒と保護者が情報モラルやトラブル回避のポイントを共通理解できる有効な機会であることから、土曜日に実施するなど保護者が参加しやすいよう工夫をしております。今後も保護者の参加を促すよう積極的に呼びかけてまいります。
質問4:現在の昭島市で実施のアンケート上では、携帯電話・スマホ・タブレット所有の別がとられていません。キッズ携帯は幼少時から所有しているお子さんが多く、スマホの機能とも格段に異なります。SNS以外の利用用途についても、ゲームか勉学への利用かなど確認できるとよいのではないでしょうか。また、せっかく子どもたちの声を拾える機会ですので、スマホ所有に係る悩みの自由記述欄があってもよいように思えます。以上、今後実態調査の質問項目の変更見込みはありますか。
【答弁者:学校教育部長】
次に、「携帯電話やスマートフォンについての実態調査」についてでありますが、携帯電話やスマートフォンの所持や利用方法、SNS利用のルールの策定状況等について毎年11月に児童・生徒にアンケート調査を実施しております。本調査は経年で変化をみることを目的としておりますが、アンケート調査実施前に必ず調査項目の変更について検討をしておりますので、その際に必要があれば変更を行ってまいります。
質問5:トラブルに巻き込まれた子どもたちの相談体制を構築し、子どもたちにも情報モラルやネットリテラシーの情報とあわせて、トラブル対処法を伝えていますか。
【答弁者:学校教育部長】
また、道徳や学級活動、総合的な学習の時間等の授業において、道徳科の教科書や東京都教育委員会が発行しているSNS東京ノートを活用して、発達段階に応じたトラブルの対処方法や情報モラル教育、情報リテラシーの育成を図っているところです。
さて、携帯保有は、日常生活のなかでの緊急時のやりとり、所在確認や、災害時のセーフティネットにもなります。他者や外の世界とコミュニケーションをとりやすくなるメリットがあり、実際にLINE相談が子どもたちの救済に用いられています。また、これだけの普及率であるなか、スマホをなくすということは現実的ではありません。 現在の普及は、先ほど申したように依存性のリスクを高める可能性がある反面、他者とのコミュニケーションのとりやすさの要素や教育格差を縮める役割もあると思います。そこで、
細目3 普及した状況下での有効活用について(LINE相談等の相談機能や教育での活用)お聞かせください。
質問1:昭島市では、電話での昭島市教育相談室、AKISHIMAキッズナー、子どもネット電話相談およびメールでの相談が整備されています。それぞれの相談件数はどのようでしょうか。特に、子どもネット電話相談については、この数年で件数はあがっていますか。
【答弁者:学校教育部長】
はじめに、各相談機関における平成30年度の相談件数ですが、市教育相談室では電話による相談が3件、メールによる相談が2件、AKISHIMAキッズナーでは電話相談が7件でした。最後に、子どもネット電話相談ですが、東京都が実施している事業のため市としては把握しておりません。
質問2:教育格差を縮める役割もあるとおもいます。昭島市デジタル家庭学習システムくじらーニングの活用状況はどのようでしょうか。また、利用者や学校からの声はあがっていますか。
【答弁者:学校教育部長】
次に、「昭島市デジタル家庭学習システムくじらーニングの活用」についてでありますが、全児童・生徒に活用のためのリーフレットを配布し、家庭学習の際の活用を呼びかけております。また、各校で実施している土曜日補習教室では積極的に活用している学校があります。その結果、子どもたちが学習への関心を高め、意欲的に取り組むようになってきたとの報告を受けております。今後も本システムの充実と積極的な活用を促してまいります。