「子どもたちの多様性を認め、1人1人に届ける学校教育とは」2020年6月議会 林まい子の一般質問①
林 一般質問
ただいま議長の指名を受けましたので、通告に従い、一般質問を行います。まずは、新型コロナウイルス感染症につき、ご逝去なさった方々のご冥福と、羅患なさった方々の1日も早いご回復を切にお祈りいたします。また、本市においては、長期にわたるご対応が要されているなか、全庁挙げて大変なご尽力の上お取り組み頂いていること感謝申し上げます。
教育委員会におかれては、2月27日の首相による突然の休校要請から今にいたるまで、文部科学省や東京都からの通達に基づきつつ市内小中学校と連携し、誰もが経験したことがない事態に対して全てのリスクの責任を負いながら命にも関わるご決断を果敢に重ねて下さいましたこと、まずもって御礼申し上げます。
この休校の間、前向きに過ごされた方ももちろんいましたが、
私含め周囲の保護者の概ねの心理的反応は、子どもも親もタイムスケジュールの組み立てからできない、子どもの生活が乱れる度無力感を感じる、周りと比較しては焦ったり落ち込んだりする、無償のオンライン教材にアクセスできるがあまりに多く選べない、というものでした。
千代田区立麹町中学校 工藤勇一前校長のコロナ禍の状況に対する「今回の事態は教育界の今までの課題をあぶり出しました。全く進まない学校のICT化。休校中に何をしていいのかわからない子どもたち。どうしていいかわからず右往左往する現場。思考停止に陥るのは本当は主体性を伸ばすことが教育の本質だったはずなのに知識注入型の教育にやっきになったツケではないでしょうか。教育の本質とは何かを改めて問い直すべきです。文部科学省も現場の教員、生徒たちも、誰かのせいにすることなく、当事者意識を持って学校がどうあるべきなのか、徹底的に考えなければいけません。私は学校に一斉に集うことができない状況でも能動的に学びたくなる仕掛け、新しい教育の姿を、教員と生徒たちと総動員で見いだしていきたいと思います」との言葉には深く共感をいたしました。
3月にはどうにかしたいと動かれていた保護者の皆さんも、4月になると外にも出られずストレスがたまり先の見通しがたたず辛い、子どもが無気力になって打つ手がない、など疲弊しはじめました。
難航する在宅ワーク、収入悪化など生活基盤について考えなければならないことが多々ある、イライラして子どもに対し厳しく接してしまうとの声もありました。直面する問題はあっても、休校の長期化に伴い声をあげる力がもはやないのです。
また、4月までは毎日具体的な指示がないとどう過ごせばよいのか分からず不安であると、詳細なスケジュールや多めの課題を求める保護者の声が数多くありました。しかし、5月前後から各校より、課題が増え始めると、就労等の関係で勉強をみられず対応困難で途方にくれる家庭がでました。
親が在宅できる家庭からも、一緒につきそい家庭学習をスケジュール通りにしようとすると子どもは勉強を嫌がる、親が焦るほど親子関係が悪化しもはや勉強どころではなくなり毎日が苦痛である、保護者が予習までみることは到底できない、家にいるとはいえ在宅ワークをこなすのに精一杯、など様々な理由から多大なストレスを感じるとの声が寄せられました。
学校再開直前には、親は課題が終わらず仕上げねばと焦るものの、子どもがあきらめくじけているとの相談も頂きました。
子どもが勉強嫌いになり得る、またDVに繋がる可能性すらある「保護者が1対1でみるスタイルを想定した家庭学習」で学びの保障を考えることは、概ね困難であることを多くの家庭が実感したのではないかと思います。
今回の休校は、学びには何が必要か、学校とは何か、身にせまって考える機会となりました。
自分で何をするか主体的に考え、判断し、行動できる自律とともに、
モチベーションを維持しながら学びを深めるためには、複数人とコミュニケーションをとりながらの協働作業が欠かせないことを理論ではなく実体験から痛感したのです。
「誰も取り残さない」を念頭に、今後はICTも必要応じて活用しながら、子どもがどこにいても学びを実現できるようにすることが急務です。
また周りと比較し落ち込まないよう自分は自分、人は人、と多様であることを受け入れる、かつ自己肯定感が高くなるよう導いてゆくこと、不安なことがあれば学校に相談しやすい関係性を親子とも日頃から築くことが必要であることも分かりました。
この未曽有の危機を、昭島市では、子どもたちが豊かな人生を送るため、真に必要な教育とは何か捉えなおす機会とし、他自治体にも先駆け動いて頂けるよう心から願いまして、「子どもたちの多様性を認め、1人1人に届ける学校教育とは」について質問いたします。
細目1 市の考える学びとその実現について問う
- 1点目、市のラジオ配信や、4月下旬の学校再開の独自判断など工夫した取り組みがなされましたが、長期休校を経験したいまだからこそ、昭島市として考える「学び」とその具体的な実現法について、教えてください。
教育長答弁:
林 まい子 議員の一般質問に、私からは1点目の「子どもたちの多様性を認め、1人1人に届ける学校教育とは」の、「市の考える学びとその実現について問う」の基本的な考え方についてご答弁申し上げ、他のご質問につきましては、担当部長よりご答弁させていただきたいと存じます。
本市では、学校・家庭・地域が連携・協働した教育を推進するとともに、子どもたち一人一人の多様な個性や能力を伸ばし、変化の激しい時代を「生きる力」を培うために「確かな学力の定着」「豊かな心の醸成」「健やかな体の育成」など、5つのプランを柱とした施策を推進し、ふるさと昭島の自然と文化を愛し、社会に主体的に貢献できる「たくましい昭島っ子」の育成を図ることを教育の目標として掲げております。
この実現に向けまして、各学校では、日々の教育活動を進めておりますが、今般の新型コロナウイルス感染症対策により、長い間、学校における教育活動の停止を余儀なくされました。
かつてない事態に、子どもたちも、ご家庭も、学校現場でも、この3か月間は、戸惑いと不安の中、試行錯誤が続く期間であったと思っております。
しかしながら、これが同時に様々な課題の発見に繋がり、今まで漠としていた課題が鮮明化されるとう、言わば効果の側面もあったと捉えております。
学校では、子どもたち、そしてご家庭との繋がりを大切にしながら、授業改善や更なる指導力の向上、また、ICTを活用した学習補完のあり方など、学校再開後に活かすことのできる様々な取組みに向き合い、家庭学習においては、子どもたち自身もご家庭でも、何を、どうすれば、という課題の発見に繋がったのではないかと捉えております。
多様な子どもたちのそれぞれにある課題を、相互に共有し、課題解決の手助けを学校における教育活動、そして家庭教育の中で、しっかりと果たしていくことが重要であり、このことが、新しい学習指導要領に示された、主体的・対話的で深い学びの実現にも繋がるものと考えております。
冒頭申し上げました5つの柱と併せて、昨年度から「楽しい学校づくり」をテーマに、各学校においては「子どもが学んで楽しい、先生が教えて楽しい」学校づくりを目指しており、これが同時に、元気な教育現場に繋がるものと考えております。
学校が再開された今、長い休校期間中の対応を一過性のものとすることなく、しっかりと検証し、多様な子どもたちに寄り添って、元気な教育現場の中で、豊かな人生を切り拓く、「たくましい昭島っ子」の育成に今後も邁進してまいります。
【林質問】
- 2点目、今後情報リテラシーの更なる取得とあわせICTの効果的な活用が求められます。
今後のICTインフラ整備のタイムスケジュール、登校できない児童・生徒も含めた活用法、市の考える個別の学び、オンライン学習に特化する支援員配置について教えてください。
【学校教育部長答弁】
はじめに「ICTを絡めた個別の学び」についてでありますが、臨時休校の間、教育委員会では子どもたちの「心身のケア」と「学びの保証」を基本に、学校と子ども、そして家庭と「繋がる」ことを重要なテーマの一つに位置付け様々な取組を行ってまいりました。
こうした中、子どもたちの学びの取組の一つとして、ICTを活用した課題提示や演習などを実施してまいりました。具体的には、学校ホームページにより自分のペースで問題や演習に取り組むことができる、eラーニングである「昭島市・くじらーニング」や、新たに東京都教育委員会の「東京ベーシック・ドリル」を追加いたしました。また、動画を通して理解を深めることができる、国や都の学びを支援する動画や市のホームページでは、市内小中学校の教員による授業動画を配信しております。この動画には、特別支援学級の子どもたちも学びができる動画も作成し、子どもたちそれぞれの状況に合った学びができる環境を設けております。
こうした取組の検証を行う中で、子どもたち一人一人の学びに応えることができるよう、国が示すICT支援員などを活用したICT環境の整備を進めてまいります。
【林質問】
- 3点目、学校であるから子どもたちが経験できる他者との協働作業や成長は何と考えますか。
また、学校へいけなくなった場合、ICTを活用し補完できることはありますか。
【答弁】
「学校であるから子どもたちが経験できる他者との協働作業や成長は何と考えるか」についてでありますが、新学習指導要領では対話的な学びを通した協働学習の重要性が示されております。
この対話的な学びでは、教室で子ども同士が話し合うことだけでなく、教員や地域など様々な人々とやり取りすることや、先人の豊かな知恵を教科書や文献などから学ぶことなどを通して、自分の考えを広めることができるようになることを成長と捉えております。
各学校においては、各教科等、あらゆる教育活動を通して対話的な学びを実践しているところです。
新型コロナウイルス感染症対策に伴う休校や出席停止などで登校できない子どもたちには、手紙や電話による対話、ICTを活用したコミュニケーションなど、様々な対話的な学びの機会を提供していくことが大切であると考えております。
【林質問】
- 4点目、ICT活用は教員の負担軽減に繋がるとお考えですか。
また、再開後の先生方の支援について、どのような体制がとられているか教えてください。
【答弁】
「ICT活用の際には、あわせて教員の業務負担減への活用は考えられているのか」についてでありますが、小学校では、今年度より教員が日常の授業で活用できるデジタル教科書の導入をしております。このデジタル教科書の導入により、授業に関連する画像や動画など、視覚的に様々な教材を提示することができるため、子どもたちの興味関心を高めたり、子ども同士の学習情報の共有化を図り話し合いが活性化したりする効果があります。また、教員にとっては、教材準備の時間短縮により負担の軽減を図ることができます。
しかしながら、ICTの操作に不慣れな教員も一定数存在していることから、教育委員会では、テキストの作成や研修会の開催に向けた準備を進めております。また、ICTのサポートに関わる支援員の配置も検討しております。
【林質問】
最後に、一番注意を払わなければならないことが、再開後の子どもたちの様子です。精神的な不安やストレスを取り除くため、当面は子どもの様子をみる人的な手当が必要かと思いますが、対応はなされているのでしょうか。
【答弁】
「学校再開後の子どもたちへの当面の人的手当」についてでありますが、6月1日より分散登校が始まり、11日からは通常授業となりました。先週までの学校の様子については、指導主事が全小中校を訪問し、教育活動を観察したり、教員や子どもからの声を直接聞いたりしております。指導主事からは順調に学校が再開しており、子どもたちの笑顔や元気に学ぶ姿をうかがうことができたとの報告を受けております。
しかしながら、これまでとは違った生活リズムや学校生活に、子どもたちも疲れやストレスを感じるようなるのではないかと考えております。このため、焦らず徐々にいつもの学校生活のリズムに戻せるよう、学校と教育委員会が綿密に情報共有を図りながら、支援員などによる、子どもたちの学習や環境の整備に向けた人的支援について対応してまいります。
【林質問】
細目2 学校給食から考えられる支援と、地産地消について問う
日本の子どもの6人に1人が貧困といわれている時代。生命活動の源となる食の保障は、学びの保障ととも非常に重要です。
- 1点目、今回休校時の対応の考え方を教えてください。
【答弁】
はじめに、今回の休校時の対応の考え方についてでありますが、学校給食は、児童・生徒に栄養バランスのとれた豊かな食事を提供することにより、子どもたちの健やかな成長のために大きな役割を担っております。しかしながら、新型コロナウイルス感染症対策に伴う臨時休校により、教育の一環として位置づけられている「学校給食」を継続実施することは困難であると判断いたしました。
【林質問】
- 2点目、再び一斉休校となった場合、希望するご家庭には何かしらの方法で給食を提供する考えはあるか教えてください。
【答弁】
再び一斉休校となった場合の給食の提供についてでありますが、緊急事態宣言下において、現在調理従事者の三分の二が会計年度任用職員で、お子さんを持つ保護者が多い中で、給食調理業務態勢をどの程度整えることができるかなど、安全・安心な給食の提供には様々な課題がありますことから、学校給食による給食の提供は困難であると考えております。
【林質問】
最後に、個人事業主の方より、食材が卸され販売するルートさえ確保できれば食材販売に協力できるとのお声がありました。また、市での食材販売を求める声も多く寄せられました。利用できなかった食材については、地域で循環する仕組みをつくれないか教えてください。
【答弁】
食材については、地域で循環する仕組みをつくれないかについてでありますが、学校給食の食材については、1か月分をまとめて、その月の7日前に発注することとなっております。学校給食を停止する場合は、食材にもよりますが基本的には4日前であればキャンセルが出来ることとなっております。キャンセルが出来ない食材について、学校給食部門で食材を流通させることは、業者との調整や食材の保管場所、流通の仕組みや人的確保、食材の衛生面など、多くの課題がありますことから困難であります。