主権者教育をすすめよう~子ども・若者参加の視点で意見聴取と施策への反映を~

ようやく東京都にこども基本条例ができ、条例にも盛り込まれた子ども・若者の意見聴取や施策への反映、参画の促進について昭島市においても実現するべきと考え質問に取り組みました。

大綱1 主権者教育をすすめよう

細目1 「こどもの意見表明と施策への反映」、「こどもの参加の促進」について問う

去る10月、日本における衆議院議員選挙の投票率は55.93%、うち18歳・19歳は、速報値で43.01%でした。日本財団が数カ国の若者に対し実施した「18歳意識調査」においても、2019年時点で「自分で国や社会を変えられると思う」という質問に対して肯定的な回答をした日本の若者は18.3%と、他国と比べ最も低い値でした。

一方、2018年スウエーデン総選挙の全世代投票率は87.18%、うち18から24歳は84.9%です。スウエーデンでは、学内外のあらゆる場面で子ども・若者の社会参画が保障されています。例えば、学校では、日本の学級会に相当するクラス会議で、児童生徒自らが変えたいことを話し合います。見やすい時計、サッカーボールやバスケットゴールの必要性など環境整備から、ときにカリキュラム変更という運営に関わる事項まで議論となるそうです。さらにクラス会議で選ばれた代表者は、上位組織である生徒会に参加します。生徒会でも、学校方針や予算編成など学校運営にまで議論が及ぶことがあり、児童生徒がともに学校をつくるのです。学校外については、自分が自由にできる時間、いわゆる余暇が非常に重視されています。様々な若者団体があり、余暇には自分の関心にあった団体を選べ、興味を深掘りできるのですが、その団体内においても若者が主体的に運営に関わることが保障されています。子どもが幸せに人生を生き抜くため、社会を変える当事者としての経験を様々な場面で保障する施策の結果が、投票率に現れているのです。

子どもは大人と対等であるという人権意識とあわせて、自分の権利を守るためには他者の権利も尊重し、対話を通じて合意形成をし、生活環境をよりよく変える経験を子ども時代から積極的に積み重ねることが重要であるとの認識を大人側が持つこと、いわゆる子どもの権利の浸透がないと、本当の意味での若者施策・教育施策は為されないこともスウエーデンの事例を探るなかで分かりました。

国連・子どもの権利委員会の審査を経て2019年に日本にだされた所見では、子どもの意見の尊重について深い懸念が示されていますが、本年東京都議会において、「東京都こども基本条例」が全会一致で可決、成立したことは大きな前進です。同条例では「こどもの意見表明と施策への反映」と「こどもの参加の促進」を定めており、今後これを各地でいかに浸透させるかが問われています。

また、教育分野でも、文部科学省が主権者教育の推進を始めました。児童生徒が主権者として、他者と連携・協働しながら、地域の課題解決を社会の構成員の一員として主体的に担う力を育むこと、また、学校、家庭、地域が互いに連携・協働し、社会全体で多様な取組が実施できるような各種推進方策の実施を掲げています。あわせて、地方公共団体がなすこととして、教育会議の活用をはじめ、首長、教育委員会、選挙管理委員会などの様々な部局と公民館、自治会などの地域の関係施設や団体が連携し、主権者教育に関する多様な取組を展開するよう促してもいます。

主権者教育の先進的事例として注目される新城市若者議会を、この8月にオンライン傍聴しましたが、大人にはない柔軟で魅力的な発案を目の当たりにしました。例えば、全国初の若者による図書館リノベーションが利用率の大幅向上に繋がるなど成果も出しており、若者の政策提案を予算をつけて実行することは、まちの活性化に繋がることを証明しています。若者はまちづくりの強力なパートナーなのです。

以上、子どもの権利視点を持ちながらあらゆる機会を通じて子どもの参加・参画を促すことは、これからの時代に必要とされる主権者教育や対話的で深い学びの姿と重なります。また、その実践は、市に住み続けたい愛着の醸成やまちの活性化、さらには幸福感に直結する自己有用感や自公肯定感の向上にも繋がり、取り組まない理由を私は見つけられません。

市で施策展開するにあたっての第一歩は、部署横断的に子どもの権利についての認識を深め、あらゆる施策について子ども参加の視点を持つことです。各種計画策定において子ども参加をうたうなど、認識さえ共有できれば、あとは何をすべきか自ずとみえるはずです。

最後に、現在子どもたちの置かれる状況が危機的です。先月文部科学省は、昨年度の児童生徒のいじめや自殺が過去最多であると公表をしました。また、昨年ユニセフが発表した子どもの調査結果によると、日本は精神的幸福度の観点では、38カ国中37位です。

大人には、子どもたちが自分らしく幸せに生きていくため社会を変えられる主権者に育てる責務があります。子どもとともに誰もが暮らしやすいまちづくりに積極的に舵をとるべきであり、そのためにできることが子どもの権利に裏打ちされた子ども参加と意見表明・反映の実践なのです。

 

そこで質問です。まず、 「こどもの意見表明と施策への反映」、「こどもの参加の促進」に関わる各種施策について、市の現状を教えてください。

 

答弁:市長

子どもは国の宝であり、昭島の宝であります。

情報通信技術の普及・発展・国際化の進展など、子ども・若者を取り巻く社会状況は目まぐるしく変化しており、これからの社会を生き抜いていくためには、自ら課題を見つけ、学び、考え、主体的に判断、行動し、解決していく能力を育んでいく必要があります。

そのためには、すべての子ども・若者が、自分の生き方や進路を主体的に考えて選択し、社会の一員として自覚をもって、様々な場面で社会参加・社会参画できるよう支援が必要なものと認識しております。

しかしながら、今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う影響により、子どもたちが関わることができる施策、イベントのほぼすべてが中止となるなど、子どもたちの成長や発達に必要な場の提供ができない状況が続いております。

緊急事態宣言が解除されたことに伴い、徐々に日常生活が戻りつつある状況ではありますが、今後、国や都から発出される指針等を踏まえ、また感染症拡大防止対策もしっかりと講じながら、子どもたちが主体的に意見を表明し、関わることができる施策、イベントの再開に向けた取組を、進めてまいりたいと考えているところでございます。

我が国も批准しております、児童の権利に関する条約では、自分にかかわる事柄について自己の意見表明権を持ち、年齢や精神の成長に則って対応される権利を持つと規定されておりますことから、今後におきましても、子ども・若者の意見表明や社会参画を促進しながら、社会で起きている出来事について自ら考え、主体的に行動できる子ども・若者の育成に努めてまいりたいと存じます。

 

答弁:子ども家庭部長

ご質問の1点目、主権者教育をすすめようについてご答弁申し上げます。

子どもたちが自分に関する事柄について意見を表明し、行政や地域、周りの大人たちがその声に真摯に耳を傾け、誠実に対応する。こうした取り組みの積み重ねが子どもたちの自己肯定感を育み、社会的自立に繋がっていくものと認識しております。

現在本市では、青少年フェスティバルや成人式、児童センターの運営など、子ども・若者が主体的にかかわる様々な施策やイベント、施設において、実行委員や運営委員として子どもたちが参画する中で、自らの意見を述べ、社会性を身に着けるとともに、主体的に行動するための力の育成に努めているところであります。

しかしながら、これらの事業、施策につきましては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、残念ながら成人式を除き、昨年度より2年続けて満足に開催できておらず、子ども・若者が参画できる機会を提供できない状況にあります。

こうした中、本年4月に国において策定されました、「子供・若者育成支援推進大綱」の中では、子供・若者の意見が積極的かつ適切に反映されるよう、各種審議会、懇談会等の委員構成に配慮するとともに、インターネットによる意見募集や直接参加型の意見交換等を推進するよう求められております。

本市におきましては、「子ども・若者未来対策推進計画」の策定に向け、本年度において小学校5年生及び中学校2年生を対象に、生活状況調査を実施したところであり、この調査の結果を踏まえつつ、子ども・若者の意見表明や社会参画を促進する方策を検討しますとともに、主体的に行動できる子ども・若者の育成を推進してまいりたいと考えております。