2025年3月一般質問:大綱①インクルーシブなまちづくりを目指そう

3月議会の一般質問が終わりました。
1時間の質問持ち時間のなかで、一問一答方式を選び、毎回質問に臨んでいます。
一問一答の再質問前、1回目の質問と市の答弁を以下に書き出します。

※再質問部分については、任期中は市の公式HPの動画からご覧頂けます。以下リンクの25分30秒ごろから一問一答が始まります。

https://smart.discussvision.net/smart/tenant/akishima/WebView/rd/speech.html?council_id=52&schedule_id=3&playlist_id=3&speaker_id=29&target_year=2025

【林質問】

ただいま議長のご指名を受けましたので、通告に従い、大綱2問の一般質問を始めさせていただきます。
大綱1 インクルーシブなまちづくりを目指そう
「インクルーシブ教育」という言葉を耳にする機会が増えていますが、世界的には、1994年ユネスコとスペイン政府が開催した「特別ニーズ教育世界会議」における「サラマンカ声明」で提唱されました。この声明では、インクルーシブ志向をもつ通常の学校が、差別的態度と戦いすべての人を喜んで受け入れる地域社会やインクルーシブ社会を築き上げ、さらには万人のための教育を達成する最も効果的な手段で費用対効果も高いと謳われています。
一方、日本は、2006年国連総会で採択され2014年に批准した障害者の権利に関する条約、略して障害者権利条約に2007年に署名して以来、インクルーシブ教育システムの確保等定めるこの条約に基き国内法の整備など進めてきました。2011年に改正された障害者基本法第16条では、国及び地方公共団体は、児童生徒が障害の有無にかかわらず共に教育を受けられるよう配慮しつつ、教育の内容・方法の改善等必要な施策を講じる必要があり、障害当事者とその保護者に対する十分な情報提供と意向の尊重、交流及び共同学習の積極的推進と相互理解の促進、調査・研究・人材の確保・資質の向上、適切な教材等の提供、学校施設等環境の整備推進など定められました。
この法改正の翌2012年、中央教育審議会が報告した「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進」では、誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い、人々の多様なあり方を認め合える全員参加型の社会である「共生社会」の形成には、障害者権利条約に基づくインクルーシブ教育システムの理念に基づき、特別支援教育の着実な推進が必要とされました。一方、2022年に国連の障害者権利委員会から「障害のある子どもの分離された特別教育が永続している」と勧告を受けたことは記憶に新しいのではないでしょうか。
特別支援教育については、特別支援学校、特別支援学級、特別支援教室と多様な学びの場があり、国は柔軟に転学できるとしていますが、「就学時の選択が人生の分かれ道になる」と切実に悩む保護者がたがおり、特別支援学校では手厚い個別支援が受けられるが日常的に地域のお子さん同士交流し学びあうことも重要である、通常学級を選択したいが合理的配慮や周囲の理解に不安があるなどのご意見を伺うことがありました。国では、さまざまな障害のある人がいることが前提になっていない社会こそ問題であるとする「障害の社会モデル」を踏まえた合理的配慮が必要としており、ソフト・ハード双方の更なる環境整備が必要です。
また、日本のインクルーシブ教育推進は障害者権利条約に端緒を発しますが、「サラマンカ声明」では万人のための教育が目指されており、本来インクルーシブは広義であるべきです。ユネスコは、インクルージョンについて、障がいだけでなく、ジェンダー、年齢、居住地、貧困、民族性、言語、宗教、性的指向や性自認、信念など多様な理由での他者の排除にも言及しており、インクルーシブ教育は「社会的包摂という目標の達成に貢献するプロセス」としています。

この点、共通理解を持った上で、目の前の子どもや関係者の声を聴きながら教育システムをよりよく変えていくプロセスを常に踏む必要があります。多様性を知り、お互いを認め助け合い、良さを活かしあいながらともに学び、育ちあえる豊かな実体験は、児童生徒一人ひとりの人格形成、さらには関わる大人にも大きな影響を与え、ウエルビーイングや共生社会の実現に繋がるはずです。
インクルージョンは多岐にわたりますが今回3つの視点から質問します。市は次期特別支援教育推進計画に基づきインクルーシブ教育の理念を踏まえた特別支援教育の更なる充実を目指しており特別支援教育の視点、二点目は医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律いわゆる医療的ケア児支援法施行を契機とする視点、三点目はハード面での環境整備の視点からお伺いします。
細目1 学校教育の環境整備について
市の特別支援学級設置校・特別支援教室拠点校・通級指導学級の在籍児童・生徒数は少子化に関わらず増加しており、昨年田中小学校に自閉症・情緒障害学級が新設されました。また、文部科学省が2022年に実施した調査によれば、小・中学校通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒は全体の8.8%おり、通常学級におけるインクルーシブの充実が必須です。そこで質問です。
一点目、市が目指すインクルーシブ教育の姿と、実現のための通常学級における特別支援教育の取り組み及び課題をお答えください。
二点目、差別・偏見は知らないことから生じます。子どもたちが多様性を体感し、相互理解・協働しながら学びあう実体験は重要ですが、交流及び共同学習の現状と課題をお答えください。また前提として、理解教育が欠かせません。市内学校における児童生徒、保護者に対する取り組みについてお答えください。
細目2 医療的ケア児の受け入れ体制について
増加する医療的ケア児への支援が重要課題となり、2021年医療的ケア児支援法が施行されました。医療的ケア児の日常生活及び社会生活を社会全体で支えることを基本理念としていますが、市においてはガイドライン作成の上医療的ケア児の保育園での受け入れを開始しており、その在籍人数をお答えください。またすでに市内小中学校に通う医療的ケア児がいれば人数をお答えください。
次に、支援にあたっては多職種連携が欠かせません。医療的ケア児支援法においても「個々の医療的ケア児の年齢、必要とする医療的ケアの種類及び生活の実態に応じて、かつ、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体相互の緊密な連携の下に、切れ目なく行われなければならない」としており、かねてから訴えている医療的ケア児コーディネーターの早急な配置が必要です。お答えください。
細目3 インクルーシブな公共施設について
過去、肢体不自由児の保護者数名から、ゆくゆくは徒歩圏内の地域の学校への就学を検討したいが、校舎がバリアフリーでなく希望の選択はその時点で無理かというお声を頂きました。社会的障壁は取り除くべきであり、スロープ、エレベーター、お手洗いのユニバーサルシート、点字ブロック等整備についてお考えをお答えください。
また、昨年第2回定例会で採択された「重症心身障害児が昭島で安心して暮らせるための対策を求める陳情」のなかで「建設中の市民総合交流拠点はじめ、重症心身障害児が安心して利用できる公共施設等の拡充」との要望がありました。学校外の市内公共施設においてもインクルーシブの視点から施設整備を進めるべきです。お答えください。

【市長答弁】
公共施設は、市民が互いに支え合い、尊重し合う、安心して暮らせる地域となるためのつながりの場として、大変重要であります。
市内公共施設につきましては、今年度策定を進めております「昭島市地域コミュニティ活動連携推進計画」におきまして、各地域の防災とともに、今後の地域コミュニティにおいて地域の障害者や高齢者及び子どもたちをはじめ、誰でも気軽に足を運ぶことのできる居場所として位置付けております。加えて、連携を促進する場ともなる重要な拠点として捉えており、今後の施設整備にあたっては、インクルーシブな視点は重要であると認識しているところであります。
現在、本市において公共施設の老朽化への対応が最重要課題となっておりますが、令和7年度から8年度にかけて、「昭島市公共施設等総合管理計画における個別施設計画」と「昭島市公共施設等総合管理計画」について、昨今の社会経済状況を踏まえ、順次更新を行ってまいります。
この2つの計画を柱とし、各施設における更新や複合化、長寿命化などの対応に併せ、バリアフリーの推進、ユニバーサルデザインの活用など、時代の変化に応じた施設機能の向上を図ることで、誰でも気軽に足を運ぶことのできる居場所づくりをはじめとした、多様性と意外性のある楽しいまちを目指す様々な取組を進めてまいる所存であります。

【学校教育部答弁】
ご質問の1点目インクルーシブなまちづくりをめざそうのうち、
1点目の学校教育の環境整備について、ご答弁申し上げます。
はじめに、市が目指すインクルーシブ教育の姿につきましては、全ての子どもが可能な限り共に学ぶことに配慮しつつ、自立と社会参加に向けて、一人一人の教育的ニーズに応じた、連続性のある多様な学びの場を充実していくことを基本的な考え方とし、その取組を推進しております。
こうした中、インクルーシブ教育を実現するための通常学級における取組につきましては、読み取りに困難さを抱えている児童・生徒には、「リーディングトラッカー」の活用や、写字に困難さを抱えている児童・生徒には、板書をタブレットで撮影するなど、個々の状況に即したきめ細かな対応に努めております。
課題といたしましては、特別支援教育の考え方やインクルーシブ教育の在り方などの理解促進や、障害の有無に関わらず、共に育ち合うために、児童・生徒、教員、保護者が共通理解のもと、同じ方向を目指して支援していくことが重要と捉えております。
次に、固定学級設置校における校内の交流及び共同学習の現状につきまして、多数の児童・生徒が参加する活動といたしましては、行事や縦割り班活動、クラブ活動やお楽しみ会などの特別活動であります。
教科学習におきましては、通常学級での学習を希望する児童・生徒の意向を踏まえ、通常学級において共に学習しております。
課題といたしましては、対象児童・生徒の状況を十分理解し、豊かな人間性を育むことができるよう、教員や児童・生徒相互の円滑なコミュニケーションを図る中で、継続的な交流及び共同学習を実施していくことであると捉えております。
次に、学校における特別支援教育に関する理解教育についてであります。
児童・生徒に対しましては、道徳科や総合的な学習の時間における、福祉に関する学習等に関連付けるとともに、交流及び共同学習を通して、特別支援教育に対する理解教育に努めております。
また、保護者に対しましては、保護者会等において説明をいたし、特別支援教育に対する理解促進に努めるとともに、学校便り等を通して周知啓発に取り組んでおります。

【子ども家庭部答弁】
ご質問の1点目、インクルーシブなまちづくりを目指そうについてのうち、
2点目、医療的ケア児の受け入れ体制についてご答弁申し上げます。
はじめに、保育園での受け入れ人数についてであります。令和6年4月の年度当初におきましては、認可保育所4園で5名の医療的ケア児の受け入れを行っております。また、令和7年度においては、3園にて5名の医療的ケア児を受け入れる予定でございます。
次に、市内小学校に通っている医療的ケア児につきましては、現在把握している人数は1名であり、通常の学級において安全・安心な学校生活を送ることができるよう、介助員を配置し対応しております。
次に、医療的ケア児コーディネーターの配置についてであります。
市といたしましても、医療的ケア児コーディネーターは、医療的ケア児とその家族からの相談に応じ、各支援等関係機関を連携させるなどの重要な役割を担うものと認識しております。
引き続き、既に医療的ケア児コーディネーターを配置している自治体の取組事例などを研究するとともに、医療的ケア児関係者会議の中で、その役割や配置等について検討してまいります。

【政策調整担当部長答弁】
ご質問の1点目インクルーシブなまちづくりを目指そうのうち、
3点目のインクルーシブな公共施設について、ご答弁申し上げます。
学校においては、共生社会の実現に向け、インクルーシブ教育の構築が求められており、学校施設はその実現に向けて基盤となる施設であります。
こうしたことから、今後の学校施設の在り方につきましては、今年度までに実施した耐力度調査及び簡易老朽化度調査の結果を踏まえ、今後の施設更新や長寿命化に向けた方針を検討していく中で、バリアフリーやユニバーサルデザイン、またインクルーシブの視点を踏まえ、誰もが安心して豊かに学べる教育環境の整備に努めてまいります。
次に、現在建設中の市民総合交流拠点施設につきましては、障害者を含めたあらゆる市民が利用しやすい施設整備を目指し、ユニバーサルデザインを基本に施設整備が図られております。各階には、バリアフリートイレを設置し、そのうち3階には、大人でも利用可能なユニバーサルシート対応の大型ベッドを設置いたします。施設全体のバリアフリー化や車いすに対応したエレベーター及び授乳室などを設置し、様々な立場の方が利用しやすい施設を整備いたします。