2019年9月議会 篠原ゆか 一般質問「市民参画で進める生物多様性地域戦略について」

9月議会終了後 みらいネットワーク会派で議会報告を行った

【篠原】

大綱1市民参画で進める生物多様性地域戦略について質問いたします。
生物多様性地域戦略についてはこれまで何度も質問を続けてまいりました。今回も多様な市民がかかわる多様な部署がかかわる生物多様性地域戦略の観点から質問を行っていきたいと思います。
生物多様性とは多種多様な生き物が一緒にいること、そのすべての生き物の個性や違いのことを言います。私たち人間も生物多様性の中の一つです。人間は、人間だけの力で生きていくことはできません。生物多様性により、様々な生き物たちが食べ物、薬、遊びの場や文化を与えてくれるのです。その生き物たちが現在ものすごいスピードで絶滅しています。人間が生き物を取りすぎ、生き物の住処を壊し、ほかの場所から新たな生き物を連れてくることで、生態系を壊し続けているからです。地球上には3000万種類の生物が生きています。日本だけでも確認されているもので9万種、知られていないものを含めると30万種ほども言われています。しかしながら7分間に1種類のペースで生物の種が絶滅しています。今こうしている間にも絶滅が進んでいます。恐竜絶滅時代よりもはるかに速いスピードで生物が絶滅している、ミレニアム生態系評価によると人類がここ数100年で絶滅の速度を1000倍に加速させているとのことです。大量絶滅時代なのです。もし何もしなければ「2050年には2000年時点の自然地域の1割が消失する」と言われています。日本のでは4種類に1種は絶滅の危機にさらされているという状況です 環境省レッドリスト掲載種数も年々増えており、現在3675種、20年前から1000種類近くも増えています。
このことに危機感をもった日本は1993年に「生物多様性条約」に批准し、95年、2002年、2007年の3度にわたり国家戦略を策定してきました。2008年に「生物多様性基本法」が施行され、国家戦略が法律でも義務付けられました。それに基づき策定されたのが、生物多様性国家戦略2010であり、生物多様性の保全と持続可能な利用を進めるための基本的な計画として2010年3月16日に閣議決定されました。
計画のミッション短期目標は
2020年までに、回復力がありまた必要なサービスを引き続き提供できる生態系を確保するため、生物多様性の損失を止めるための効果的かつ緊急の行動を実施する。
そのための20の個別目標が、2010年愛知県名古屋市で開催されたCOP10において、これ以上生物多様性が失われないようにするため具体的な行動目標である「愛知目標」ができたのです。
愛知目標は2020年を目標とし、さらにその達成にむけたに国の個別目標があります。
生物多様性の保全にむけたこれらの取り組みは持続可能な開発目標SDGSの根底でもあります。

しかし、全国的にこの取り組みが進んでいるかといえば、そうではありません。
都道府県レベルではほとんどが地域戦略を策定しているものの、あまり周知されておらず主流化されるというにはまだまだ遠い状況にあります。

空気、食べ物、衣類、建物、薬品、私たちの暮らしは生物多様性がもたらす沢山の恵み=生態系サービスの上に成り立っています。生態系サービスは文化、歴史、伝統と密接に結びついています。愛知目標の18には「伝統的知識の継承」とあります。個別目標の中にも「伝統的生活文化の知恵や資源利用、技術の再評価、継承、活用の促進などと示されています。食文化、それにまつわる、道具、言葉もだんだんと失われていく。生態系サービスを守ることと文化や伝統を守ることはつながっているのです。この観点も絶対になくしてほしくない視点の一つです。
生態系サービスの上に成り立っている暮らしだということをそれぞれの分野で考え、実行していく必要がある、そのための地域戦略であり、市も計画策定のために動き出しています。しっかりと行動に結びついていけるよういくつかお伺いします。

細目1 策定の流れについて
(1)これまでの策定状況、現状、これからの策定状況について?

【答弁者:市長】
「環境との共生」を総合基本計画の理念の一つに掲げ、まちづくりを進めてまいりました。
環境は、人類のみならず地球上のすべての生き物にとってかけがえのないものであります。私たち人類は、誰もが快適で暮らしやすい生活環境を維持しながら、自然の恵みを持続して享受していくために、健全で豊かな生態系と生物多様性を維持していかなければなりません。特に、本市においては、多摩川や崖線などの自然環境に恵まれていることから、そこに生息している動植物の生息環境の把握や保護・保全に努め、必要に応じてその回復のための施策を講じているところであります。
生物多様性地域戦略につきましては、生物多様性基本法において、その策定が努力義務とされていることから、その前段として、これまで、市民や学識経験者等と連携を図りながら、市内に生息する動植物に関する実態調査等に取り組んでまいりました。
こうした中、現環境基本計画につきまして、1年前倒しで改定することとし、新計画は、水と緑の基本計画、地球温暖化対策実行計画及び地域気候変動適応計画と合わせ、生物多様性地域戦略も内包して改定するよう、既に環境審議会へ諮問を行ったところであります。
改定に当たりましては、審議会での熱心なご議論をお願いし、また、市民や事業者の皆様の意見等も反映する機会を設けながら、生物多様性地域戦略を含め、「環境との共生」を重視した昭島らしい計画としてまいりたいと存じます。

【答弁者: 環境部長】
ご質問の1点目、市民参画で進める生物多様性地域戦略についてご答弁申し上げます。
初めに、策定の流れについてであります。生物の多様性につきましては、平成20年6月公布の生物多様性基本法により、その保全及び持続可能な利用に関する基本的な計画として生物多様性地域戦略を定めるよう地方自治体に努力義務が課せられております。すべての動植物が一つの生態系の中で生存し、人類がその恵沢を将来にわたり享受できるよう次世代へ引き継いでいくという重要性から、市といたしましても、地域戦略の策定は重要な課題であると認識いたしております。
これまでの進捗状況といたしましては、策定に向けて、市民を対象に生物に関する環境学習講座を数年にわたり開催するとともに、市内の環境団体等に呼びかけ、意見等をうかがったところであります。現状といたしましては、本年7月22日開催の令和元年度第1回環境審議会において、市長から、生物多様性地域戦略等を内包した次期環境基本計画の策定について諮問を行ったところであり、今後、庁内検討委員会及び作業部会において課題の洗い出しを行い、市民や事業者の皆様の意見等もうかがいながら、環境審議会で活発なご議論をいただき、約1年半をかけ策定を進めてまいります。

(2)計画はコンサルに任せるのか?
【答弁者: 環境部長】
環境基本計画等改定業務支援委託を行うが、委託内容をしては、環境の現状と課題の整理、現行計画の進捗状況の評価、上位・関連計画等の動向調査、ワークショップ等の補助、会議等運営支援、計画書等作成・印刷等とする。
計画そのものは、諮問に応じて環境審議会で議論をいただき、その答申をもとに策定するもので、コンサルは、あくまでも事務局の作業補助を行うこととなる。

(3)環境新議会の位置付けは?
【答弁者: 環境部長】
環境基本条例に、環境基本計画の策定に当たっては、環境審議会に意見を聴くことが定められている。既に行った諮問に応じ、約1年半の議論の後、計画案を答申いただくこととなる。

細目2環境基本計画と、生物多様性について
(1)環境基本計画に盛り込むこととなった経緯?
地域戦略との整合性をどうとらえるのか?

【答弁者: 環境部長】
次に、環境基本計画と生物多様性についてであります。環境基本計画に生物多様性地域戦略を内包することとなった経緯といたしましては、現在、環境基本計画と水と緑の基本計画の2計画がそれぞれ進められているところ、次期計画においては、市のまちづくりの理念である「環境との共生」をより明確化するため、環境基本計画に水と緑の基本計画、生物多様性地域戦略、地球温暖化対策実行計画、地域気候変動適応計画を内包する環境総合基本計画的な計画を策定することとし、その中で、基本計画と地域戦略との整合性も担保するものであります。

(2)次に、生態系と生物多様性の経済学「TEEB」(ティー・イー・イー・ビー)というプロジェクトがあり、その報告書を環境省が紹介していました。「TEEB」の説明を読むと、生態系サービス=自然の恵み を経済的に評価し、自然の重要性の認識に役立てようというものです。すべての人々が「自然の」価値を認識し、自らの意思決定や行動に反映させる社会をめざし、自然の価値を経済的に可視化することの有効性を訴えています。とあります。
森林が水を供給するだけでなく、洪水など自然災害を軽減する働き、自然を楽しむというレクレーションや観光としての価値など、様々な価値と経済効果をもたらしている、これを評価していこうということを求められているのです。
例えば、6年ほど前当時都市環境委員会で視察に行った兵庫県豊岡市では、人とコウノトリが共生する豊かな自然環境の創造を目指し、平成15年以降、農薬や化学肥料を使わないコウノトリ育む農法をすすめられ、農家には10アールあたり4万円が支払われてきましたが、そのコウノトリ米はより高値で買い取られ、結果としてコウノトリ関係の観光による経済効果は最大10憶円以上とされています。
生物多様性の保全の経済的価値を認識して取り組んだ結果大きな経済効果を生んだというわかりやすい事例です。
数値目標を出し、市一丸となる機運づくりが必要では?各課の役割、目標を定めるべき?

【答弁者: 環境部長】
環境基本計画は、総合基本計画のまちづくりの理念の一つである「環境との共生」を実現するための計画であることから、市民、事業者、市が一体となって策定し、推進していく計画である。数値目標については、可能なものはこれまでも設定してきたが、新たな総合基本計画との整合性を図り、各部課と調整しながら、新たな目標も可能な限り設定していく。

細目3市民との協働について
(1)まちづくりという観点で考える場合、市民との協働は不可欠である。団体だけに意見を聞くのではなく、商工会や観光協会、各地域の自治会などに情報共有、計画づくりに参加してもらうべきだと考えるが、市はどう考えるのか?

【答弁者: 環境部長】
次に、市民との協働についてであります。環境基本計画を含む市の各種計画策定において、市民や事業者の皆様の意見等を反映することは大変重要なことと認識いたしております。環境基本条例に、環境基本計画の策定に当たっては、環境審議会の意見を聴くこと、市民及び事業者の意見を反映できるよう必要な措置を講じることが規定されておりますことからも、パブリックコメントや市民の皆様が直接参加できるワークショップ等を実施するとともに、ご提言の商工会や観光まちづくり協会を始めとする各団体とも情報共有を図りながら、より広く、より多くの意見等をいただき、昭島らしい計画策定に向け鋭意取り組んでまいります。

(2)進捗状況など広報でどのように広く伝えていくのか?

【答弁者: 環境部長】
環境基本計画に限らず各種計画策定に当たり、その進捗状況等を広く市民に周知することは、当然、必要がある。広報あきしまについては、紙面の関係で、パブリックコメント募集等、計画策定後の概要のお知らせに留まるが、主に市ホームページを通じ、進捗状況等について、周知するよう努める。

この生物多様性地域戦略は、環境課だけではなく、しっかり他部署との連携や、市民への周知啓発を行っていってほしい。そして、計画を昭島の市民が、「生物多様性ね。」となるくらい広めていかなければいけないし、そこには学校教育や社会教育も連携が必要である。その部分を忘れずに絶対に市だけのものにしないでなるべくたくさんの市民とともに作っていってほしい。